《小説》コランダ

  • 夜は甘く溶けて

    「ナギ、起きてる?」 鬼若家の縁側で、私は小声で呼びかけた。月のない夜は庭が暗くて、自分の足元さえよく見えない。でも、この道は幼い頃から何度も歩いてきた。ある時は二人で。ある時は、一人で。木々や花が季節によっていくら表情を変えようと、目を瞑…

  • 墨染めの黒に花束を

    こうやって焦るのも何度目だろう、いつも人と関わるときはこうなってしまう。こわくて、ちょっと痛くて、でも、それを超えたいと願う思いがある。少し震えてしまいそうな手を差し出して、続ける。あと、できれば笑ってるように見えていますように、今の表情。

  • 髪を切った日のこと

    ナギに「どうされたのですか」と聞いてもらいたくて、そしてもし叶うのなら「お似合いです」なんて言ってもらいたくて――。

  • 濃い味のカレー

    たぶん、その言葉は、いつもの彼の正直で率直な言葉なんだろうけど。辛いものは苦手だけど、別に食べていたカレーがそうだったわけじゃない。隣にいるのは、私の大切な、友達。

  • 完璧な従者

    「ねぇ、ナギ」「はい、お嬢様」 「ナギがいてくれるから、私も一緒に頑張れるの」

  • 特別なカフェラテを

    ――首長竜に縁があるってどういう人なのかしら?――

  • チョコの味は、

    ブランカは甘いものが好きじゃないからこのチョコはあげられないな。マスカーニャさんはどうだろう、食べてくれるとは思うけど一粒じゃ物足りないかもしれない。

  • 眠れぬ夜と朱い夢

    知りたいと思うこの気持ちが愛だったらいい。できればいつも隣を歩いてほしいというこの願いが愛だったらいい。眠れない夜に何度も想った朱が愛の色だったらいい。

  • 二度目の賭けに手を振って

    「防犯の基本その一、怖い目に遭ったら大声を上げること」

  • 本の栞は軽やかに

    目と目を合わせてポケモン勝負……というトレーナーとしての憧れは今はまだ叶えられないけれど、ここでさようならはあまりにも惜しい。誰かと仲良くなりたくて、一歩踏み出したくて私は今ここにいるのだから、と小さく深呼吸してお願いを切り出した。