特別なカフェラテを

 今日はナギの知人で、鬼若家の親戚にあたる方のお誕生日をお祝いする準備をしている。私はまだお会いしたことがないけれど、ナギから聞いた話では、とても穏やかでユーモアのある面白い方だとか。少しだけ耳にしたカフェラテが大好きという情報が妙に頭に残っている。

「お嬢様、こちらのリボンでよろしいでしょうか?」

 ナギが選んだのは上品な紫のリボンだった。私は水色の贈り物用のボックスにそれを添えてみる。

「うん、とても素敵。ナギは服だけじゃなくてこういう物の色を選ぶのも上手なのね」

「恐縮です。ただ、次回はリボンの選択肢をもう少し広げておくべきかと存じます」

 仕事中のナギのいつも通りお硬い口調に、少し口元が緩む。こんなちょっとした準備の時間にも、彼は抜かりなく最適解を探している。
 贈り物はカフェラテがテーマ。ナギが選んだ特別なグランブルマウンテンをブレンドしたコーヒー豆と、柔らかな甘さが特徴的な高級モーモーミルクパウダー、そしてアマルルガ柄――首長竜に縁があるってどういう人なのかしら?――の可愛いカップのセット。私は包装を担当し、ナギは全体のチェック役をしてくれている。

「お嬢様、リボンの結び目が少々緩いかと」
「えっ、そう?」
「こちらをご覧ください。仕上がりの美しさを維持するには、このように少し角度をつけて……」

 ナギがさっきまで私が結んでいたリボンにそっと手を添えて、形を整えてからきゅっと引き締める。隣り合うナギと距離が近くなって心臓が少し跳ねるけれど、彼はいたって冷静なのがほんのちょっともどかしい。

「……これで完成です」
「ありがとう、ナギ。とっても綺麗に仕上げてもらっちゃった。やっぱりナギはいつでも頼りになるのね」

 ナギは軽く一礼を返すだけで、次の確認に移っていく。
 その後、渡すときの段取りもナギが緻密に計画してくれた。「お嬢様の手から直接お渡しになったほうが印象が良い」と言われ、少し緊張する。

「大丈夫です。鬼若家の関係者は礼節と敬意を持って関わろうとしてくださる方には相応の態度で迎えさせていただきますので、心配は不要です」
「……そうね。ナギがそう言うなら大丈夫かな」

 準備を終えた贈り物を見ながら、心が緩んでちょっとだけ微笑みがこぼれた。まだ見ぬお祝いする方の笑顔が浮かぶようで、なんだか私まで嬉しい気持ちになるのだった。

2025/01/15 Happy Birthday!