無心の階段
「”正しいこととは”何ですか。」ここには誰もいません。
託しもの
「ああここで話してたって、いつまで経っても埒が明きやしない。これ、持ってくからね。」「好きなだけ持っていけ。俺はここで魔具を作ってるから。外は任せた。」さっきまで怒鳴り合っていた指導員は、もううんざりしたとばかりにスンと話を切り上げ、お互い…
入用のもの
ソニアが階段を折りて訪れた作成室は、慌ただしい雰囲気で満たされていました。同じく閉じ込められ、ああでもないこうでもないと右往左往する指導員や商業棟のスタッフ達は絶えず、半ば怒鳴るように小難しい話をぶつけ合っています。ソニアは自分の専門分野と…
願え小ネズミ
草陰に隠れて、のたうち回るような幾筋もの地響きをやり過ごした。私の小さい体で無策に飛び出せば、この地面の下を無秩序に食い荒らす魔物に飲み込まれてしまうことは明白だ。しかし、この小さい体のお陰であの巨躯や魔物のような、人のような何かに見つから…
星が落ちる日
いつか夜空中の星が落ちてくる日が訪れたなら、私は月と星を見てみたいのです。
その魔法は世界の一欠片
赤く塗られた扉が目の前にあった。手をかけてゆっくり開くと謎の文様が浮かび上がる。この部屋に入ったことは学生時代も指導員になってからも一度もない。文様は私の知らない防護魔法の陣か、それとも入退室の記録がされる自動書記系の陣だろうか。火薬草の保…
栗鼠と火薬草
「これは……火薬草」袋に刻まれた防火の魔法陣を見て、水をまとわせたつもりでいた無防備な手に気付く。今のところ目立った命の危険に晒されてはいないとはいえ、この未曾有の緊急事態で魔法が使えないことを度々忘れそうになってしまうのは如何なものか。袋…