託しもの

「ああここで話してたって、いつまで経っても埒が明きやしない。これ、持ってくからね。」
「好きなだけ持っていけ。俺はここで魔具を作ってるから。外は任せた。」

さっきまで怒鳴り合っていた指導員は、もううんざりしたとばかりにスンと話を切り上げ、お互いにきびすを返して反対へ歩いていきました。その割に、どこか晴れ晴れしいような、さっきよりずっと凛とした目を二人共しています。二人はソニアの来るより何年も、何十年も前から研究棟に勤める大先輩です。きっと、こんな事態は初めてでも、あのようなやり取りをしたのは初めてではないのだろうと思い、ソニアは自分の友人達を思い浮かべました。自分の回りにはどちらかと言えば真面目で、努力家な友人が多かった記憶があり、そんな友人たちの心を癒やすのがソニアにとってとても心を砕く価値のあるものでした。一体大先輩達は、どんな学生時代を送っていたのでしょう。今日のこの事態のような出来事もあったのでしょうか。この騒動が収まったらいつか聞いてみようとそうっと考えながら、ソニアも先に出ていった先輩に習って、まん丸い不思議な石のような魔具を手に取ります。

「あの、これ、持っていきますね。きっといろいろ見つけてきます。」
「おう、それは助かる。作るやつがいたなら、使うやつがいなくちゃいけない。頼んだよ。」

ソニアはうんとしっかり頷いて、魔具をぎゅうと大事に抱えました。