文章

本の栞は軽やかに

目と目を合わせてポケモン勝負……というトレーナーとしての憧れは今はまだ叶えられないけれど、ここでさようならはあまりにも惜しい。誰かと仲良くなりたくて、一歩踏み出したくて私は今ここにいるのだから、と小さく深呼吸してお願いを切り出した。

嵐の中の月

嵐の中に月の光が見えた。大雨の打ち付ける窓の外に、薄明るく光る何かがある。雷のような一瞬の眩しさでなく、ぼんやりと淡く輝く何か。部屋を出て、そっと階段を降り、寝静まった家族に気付かれないよう玄関に立つ。

背を押すその手は

「ニトロチャージ……」 「うん、君のたきびなら覚えられるはず」 電話越しに小さく聞こえる「よっしゃ」という声に、小さな誇らしさが湧いてくる。

その魔法は誰のため

世の中には勉強するだけでは知りようもないこと、解明しようのないものばかりが溢れていることを思い知らされる毎日だ。嬉しい、楽しい、優しい、綺麗。あとは……。

この手がふれたら

水平線の近く、入道雲を見上げながら、ミナモとトクサネをつなぐ連絡船に小さく手を振った。教室の窓の向こうなど、通り掛かる船から見えるはずもない。それでいい。これは遠く海を渡る船にほんの少しの想いを乗せる、私なりの願掛けなのだ。

夢と君の御枷話

暗い部屋、青い光の前で幾度となく考えた。 私は何のためにここにいるんだろう。何のために生きてるんだろう。 その答えが、きっと今日だったのだ。

五千日の天秤は一夜に揺れる

遠く遠く、さざなみ立つ水平線がささやかに、まばゆい星々を抱えて揺れている。 華やかな祭りの時間は過ぎ、残るはかすかな煙だけ。 何かを等しく大切にはできないし、同じように等しく突き放すこともできないから。 淡く深い後悔も、確かにあった幸福も、すべてはこの胸の内に。

流れ星は帰らない

数日間の厄介払いだったのか、大人の都合を隠す優しさだったのか、それすら私には分からない。 赤と青、ガーディとロコン、遊園地と図書館、あの子とこの子。いつの間にか持たされた秤に、いつの間にか何かが、誰かが乗っている。ひとつずつ、丁寧に選びとって落とした。